生まれたばかりの赤ちゃんでも、心から愛され、
温かいまなざしで、ふわっと抱きしめられると幸せを感じます。
その瞬間に、愛され、愛することを知り、あたたかい心が育まれます。
あたたかい心は、子どもをすくすくと成長させ、
その温もりは、大人になってもぽかぽかと心に宿ります。
育児とは、子どもに栄養を注ぐと共に、
心を育てるという高度な神経機能を発揮させることです。
小児神経科医ピーター・R・フッテンロッヒャー先生は
その接合部「シナプス」の年齢別密度や数を測られました。
聴覚野の神経回路をつくるシナプスの密度は生後三か月で最大になります。
視覚野のシナプスの数は生後八か月で人生の最大になり、その数は六歳で
急激に下がります。聴覚野、視覚野ともにシナプスの密度と数は、
乳幼児期のピークから十二歳頃までに大人と同じよう減少していきます。
臨界期・最適期がある、聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚の五感は
シナプスの密度と数が最大値になる五歳頃までに獲得しなければなりません。
そのためには、お母さんは温かいまなざしで子どもの目を見て
笑いかけ、話しかけ、抱きしめます。子どもは美しい自然と生き物に触れ、
色、形、響き、手触り、香り、味を学びます。
知性は大人になっても獲得できますが、五感は就学前に外からの刺激・経験を
与えないと、使わない神経回路は除去され消失し獲得できなくなります。
高次精神機能である創造する力・思考する能力・あきらめない強い意志などを
司る前頭前野のシナプスの密度は、五歳頃ピークになり、十歳頃までは
その密度をほぼ維持しますが、その後、急激に下がり、十五歳で大人と
同じように減少することもフッテンロッヒャー先生が証明されました。
感覚野や前頭前野の神経回路をつくるシナプスの密度と数が最大値になる
〇歳~五歳の「育児と保育の方法」が何よりも大切な理由がここにあります。
その方法は、〇歳児、一歳児の「抱っこ」などの自発的欲求を満たすこと、
二歳前後には命令や否定はしないで、自我の芽を尊重することです。
三~四歳からは言葉を理解し探究心を育むために、絵本の読み聞かせなどで
正しい日本語や英語のリズムを耳から聴かせます。美術館で絵の色を視る、
音楽会で音を聴くなどの感動体験もさせてください。スマホやゲームの影響で
幼児の運動量が激減しています。運動機能が急速に発達するこの時期に、安全
な公園で歩く、走る、ボール遊びで投げる、蹴るなど、戸外の運動も十分させて
ください。子どもがうまくボールを投げたら、心の底から喜んで誉めてあげてください。
脳の報酬系が刺激され、ますます、やる気と集中力が高まります。
〇歳から五歳の神経回路をつくるシナプスが最大の瞬間に、温かいまなざしで
子どもの目を見て、抱きしめ、話しかけ子どもの五感をやさしさで刺激します。
すると、子どもは生きる喜び一杯になり、人を愛し、
人から愛される「あたたかい心」が育まれます。